ほっとする

小さな優しさに救われた夜

| 2026.02.09 更新

昔のある夜、始発電車の駅で、ちょっとした作戦を立てていた。
「次の一本に乗れば、確実に座れる」って、心の中でこっそり思っていた。

でも、目の前に立っていたのは、足が不自由そうなおじいさんだった。
少し前屈みで、頼りなげに杖を握っている。
その姿に、最初は心がざわついた。
正直、やとちは疲れていたし、座りたい気持ちも強かった。
「今日も一日、もう夜だけど、もうすぐ始まる一日なのに…」
小さな我欲が胸の奥でつぶやく。

でも、手が自然に動いた。
「どうぞ、お座りください」
言葉にならない思いが、手を通じて届くような気がした。

おじいさんは、一瞬目を見開いて、それから笑顔になった。
そして、小さなハグをしてくれた。
ぎこちない手の感触と、全力で喜ぶ笑顔に、わたしは言葉を失った。

その瞬間、疲れも、座りたい気持ちも、全部吹き飛んだ。
小さな優しさが、こんなにも力を持つことを、初めて知った気がした。
ただ、誰かを思いやるだけで、世界の色が少しだけ優しくなる。

夜の冷たい空気も、電車の静かなざわめきも、
そのハグと笑顔で、暖かいものに変わった

立ち止まって、周りを見渡すこと
小さな親切を選ぶこと
それだけで、人も自分も救われる。

その夜のことは、今でも思い出す。
そして思う。
世界は、優しさでまだまだ輝けるって。